アーティストインタビュー マリナ・アナヤ
Share
FOREST マリナ・アナヤの風呂敷
直感を大切にし、素材と丁寧に向き合い、手でつくることに敬意を持つ。
Link Collectiveは、そんなアーティストに魅力を感じています。マリナ・アナヤさんは、Link Collective の風呂敷コレクターであり、長年大ファンでいてくれる方。そんなマリナさんとの特別なご縁から、今回の繋がりが生まれました。
マリナ・アナヤさんは、版画、絵画、彫刻、陶芸、テキスタイルと、ジャンルを問わず制作を続けるアーティストです。スペイン、ブラジル、キューバで暮らし、手を動かしながら作品をつくってきました。その作品からは、温かな色とリズム、そして自然への深い愛情が伝わってきます。

FORESTは、マリナさんがデザインのすべてを手がけ、マリナさんのショップで限定販売されている風呂敷です。プリントは、私たちがいつもお願いしている60年以上の歴史をもつ神奈川県にある捺染工場。 マリナさん自身がLink Collective のコレクターである事から、どうしてもここでプリントしたいという強い思いがありご紹介させて頂き、完成まで一緒に伴奏しました。


森や鳥、月明かりに光る水面、静かに流れる風。そうした情景から生まれたデザインは、毎日の暮らしで気軽に使えて、見るたびに想像がふくらみます。
今回のインタビューは、東京とマドリードの間で、文章でやりとりしました。これまでの歩みや素材への思い、そしてFOREST風呂敷に込めた思いをマリナさん自身の言葉でお届けします。
そして今年5月、マリナさんが東京のLink Collectiveスタジオを訪ねてくれ、テキスタイルアーティストのアラキケイさんとの出会いもありました。そのときの様子は、記事の最後でご紹介します。
インタビュー:カタリナ・ムラデノヴィチョヴァ
ご自身の制作について、またインスピレーションの源について教えてください。
私にとって、ものをつくることはごく自然なことです。物心ついたときから、手を動かして何かを生み出したいという気持ちがとても強くありました。無理に引き出そうとしなくても、つくりたいという気持ちが自然と湧いてくるんです。生まれ持ったこの「生きがい」を大切に育てていくこと。それが、私の生き方そのものでした。
今でも、5歳の頃とほとんど同じことをしています。知っている技法が増えて、作品を見てもらえる機会が増えただけで、毎日の向き合い方はほとんど変わっていません。
私は、コンセプトのある作品を手仕事でつくるのが好きです。アイデアの段階から完成まで、ずっと自分で関わっていたい。だから、たくさんの技法を学ぶ必要がありました。
インスピレーションの源は、自然や森、木々、鳥、そして愛です。人生のやさしい部分を表現したいと思っています。
ブラジルやキューバなど、さまざまな国で暮らし、制作してこられました。その経験は、作品にどんな影響を与えていますか?
自分で思っていた以上に大きいと思います。特にキューバで過ごした時間ですね。人々の気質、ほかのどこにもない島ならではの空気、色彩、ラテンの温かさ、そして音楽。そのすべてが今も私の中に、そして作品の中に生きています。世界のあちこちを旅したことも同じです。
スタジオにいるときの私は、修道院にこもる修道士のような生活をしています。だからこそ旅に出ると感覚が研ぎ澄まされて、心を動かされたものを全部すくい取り、陶芸やキャンバス、作品へと持ち帰るんです。
絵画や彫刻からテキスタイルまで、幅広い素材で制作されています。ジャンルを横断することは、なぜ大切なのでしょうか?
手でつくられたものなら、何にでも惹かれてしまうんです。特に色や質感のあるものには、どうしても抗えません。だから少し前に、そんな自分をそのまま受け入れることにしました。プロジェクトごとに合った分野で制作し、ときには組み合わせて、ひとつの分野で得たことを別の分野に生かしています。
これも意識して決めたというより、自分の直感に正直でいる、ということなんだと思います。

Link Collectiveは、手仕事の知恵や伝統的な技術をとても大切にしています。新しい技法を学び続けるあなたの姿勢にも、通じるものを感じます。手仕事を大切にする思いは、どこから来ているのでしょうか?
新しい作品を考えるとき、どうやってつくるのかを理解していること、そして頭の中だけでなく自分の手でつくるのだと分かっていることが、私にはとても大切です。工程を知っていると作品の構想にも影響しますし、制作を進めるうえでも大きな助けになります。ときには工程そのものが次の展開を教えてくれることもあって、そんな思いがけない発見に身をまかせるのも楽しいんです。
大学では美術を専攻しましたが、卒業してからもさまざまな学校や工房でたくさんの技法を学んできました。今も講座に通って、毎日学び続けています。
さまざまな素材や工芸に触れるなかで、特に影響を受けた人はいますか?読者に紹介したい作り手がいれば教えてください。
祖父のビクトル・グティエレスは彫刻家でした。船乗りでもあったので、彫刻家として十分なキャリアを築いたわけではありませんが、パブリックアートや船首像、粘土やFRP、木を使った作品をたくさん残しています。私は、どこか祖父の続きを生きているような気がしています。これまでにも多くの先生や仲間から影響を受け、今も毎日学んでいますが、子どもの頃から憧れ、今も尊敬しているのは、やはり祖父です。祖父の思いを受け継いでいるのだと感じています。


最後に、私たちの工房をご紹介できたことを、とても光栄に思っています。FORESTのデザインについて、そして日本の伝統的な風呂敷づくりを選んだ理由を教えてください。
Link Collectiveの仕事が大好きで、皆さんの風呂敷はもうずいぶん前から、私の毎日の装いの一部になっています。ほぼ毎日身につけていて、今では私らしさの一部です。
FOREST風呂敷は、木々の香り、秋、月の光を映す川の水面、そして自由に飛ぶ鳥たちをイメージしてデザインしました。

手仕事を大切にする思いは、皆さんとまったく同じです。風呂敷をデザインすると決めたとき、日本の伝統的なつくり方を大切にしたいと思いました。仕上がりが美しいからだけではありません。先人たちの仕事を受け継ぎ、手仕事の価値を大切にすることに、意味があると思ったからです。一緒にお仕事ができて光栄でしたし、FORESTは本当に素晴らしい仕上がりになりました。
Link Collective スタジオでの出会い

それまでマリナとのやりとりは、メールや文章を通して、遠く離れたままでした。今年5月、白金高輪のスタジオではアラキケイさんの展示「To weave is to speak.」を開催していました。そこへ、丁度来日中だったマリナさんが訪ねてきてくれたのです。
壁には色とりどりの糸で織られたアラキケイさんの作品が並び、ワークショップのテーブルには小さな織り機がいくつも置かれていました。
一本一本の糸で、自分だけの色の言葉を紡いでいくアラキケイさん。インタビューで語ってくれたように、頭の中だけでなく手でつくることを大切にしているマリナさん。
住む場所も扱う素材も違う二人ですが、色や質感、そして手でじっくりつくることへの思いという共通点のあるお二人。
スタジオを開いたとき、訪れる人やデザイナーや、これから一緒に仕事をする人たちが集まる場所になってほしいと願っていました。まさに、こんな瞬間のためです。
一緒に仕事をしている人たちがここで出会い、つながっていく。その姿を見られるのは、私たちにとって何よりうれしいことです。これからも、スタジオがそんな出会いの生まれる場所でありたいと思っています。